中国雲南岩面画の特徴
調査報告6

雲南岩面画の特徴

 中国岩面画に関する書物は、中国では1983年〜1993年の間に、数多く出版されている(雲南の岩面画の本はなかった)。中国岩面画研究の活発期、全盛期かもしれない。しかし、1993年以後は極めて少ない。出版された関係の本の中では線刻画が最も多い。寧夏の中衛地域と賀蘭山地域、内モンゴルの陰山地域などの岩面画に関する書籍がそれである。雲南の金沙江周辺の岩面画に関する本は中国国内ではまだ一冊もない。

 雲南金沙江(麗江)の隣のチベットで発見された岩面画も線刻画が多く、露天の岩石に刻んだものも多い。その点で金沙江岩面画とかなり違う。雲南の隣の広西壮族白治区で発見された花山岩面画は塗彩画だが、人物像が中心。金沙江のような動物中心とは違っている。

 中国各地の岩面画と比べて、金沙江、大理周辺の岩面画は雲南のほかの地域には見られない極めて貴重なものであることが分かる。描写技法を見ると、稚拙で未熟なものもあれば、知的でリアリズムに富んだ高度な水準に達したものもある。

 雲南省全体に分布する岩面画についての私の一つの仮説だが、金沙江周辺の岩面画が最も古く、それが西北から南へ雲南の各地に広がっていったのではないかと思われる。揚子江上流の金沙江は雲南岩面画の伝播ルートでもある。雲南各地で発見された岩面画は同一の時代に成立したものではないが、中国南方の最も代表的な原始芸術の遺物である。

 岩面画はその当時に存在した動物や人間の姿、建築様式をありのまま映したもので、おのおのの時代の文化の表象である。文献といえば、言葉で書かれたものが連想されるが、岩面画はまさしく原始芸術の「映像文献」と言えよう。