〜日本文化のルーツを解く鍵

 

岩絵の謎

日本人南方起源説に新資料

秘境・雲南に残された
太古からのメッセージ

高床式住居に謎の人間群像、
野生の動物たち
推定数千年前の太古の時代に
描かれた人類の芸術遺産

● 調査報告 ●
1:「少数民族のメッカ」雲南省
2:金沙江岩画面の調査
3:蒼山岩面画
4:滄源岩面画と麻栗坡岩面画
5:岩面画の由来にかかわる伝説
6雲南岩面画の特徴

その文化的・芸術的価値の高さに驚嘆
国立民族学博物館顧問 梅棹 忠夫

 中国西南部の雲南地方は、民族学者にとって目のはなせない地域である。稲作発祥の地という説も根づよいうえに、高床式住居、歌垣、入墨など、日本文化との共通性も指摘されているところである。
 この雲南省の奥地に、近年続々と太古の岩絵が発見されていると聞いていたが、これまでなかなか、まとまってその写真を目にする機会がなかった。本書によって、それが実現することになった。それらの図像には、謎の人物像や野生の動物などが描かれていて、その文化的価値はもちろんのこと、芸術性においても、きわめて高い水準に達している。おどろくばかりである。

 

文化大国・中国の驚くべき新発見
元東京芸術大学学長 平山 郁夫

 東西文化交流研究のために幾度も中国を旅している私も、本書の岩絵には驚いた。まず時代が古い。 数千年前から万単位の可能性もあるという。私も黄河流域銀川付近で同類の岩壁刻線画を実際に見たことがあるが、本書の岩絵は、描かれた内容が、動物あり、人物あり、住居あり、謎の手印ありと実に多彩である。最近雲南は民俗学的に注目されつつあるが、その岩絵は、美術的方面から見ても、ひじょうに興味深いものがある。中国は何が出てくるかわからない文化の大国である。

 

雲南の岩絵から日本文化のルーツを探る試み
元国立国際美術館館長 木村 重信

 最近、世界各地で先史時代の岩絵の発見が相次いでいる。なかでも中国のそれは量的に多く、しかも変化にとんでいる。本書は雲南省の岩絵を実地調査して、その意味を問い、さらに日本文化のルーツを探ろうとするものである。これらの岩絵は、これまでまとまった形で紹介されたことがないので貴重であるだけでなく、イメージの働きを基礎にして象徴的な思考が可能になった経過をたどることによって、現代的な問題をもはらんでいる。

 

太古の人間の息吹に触れる思い
国際日本文化研究センター所長  山折 哲夫

 彭飛氏は、しばらく以前から、中国雲南省に伝わる絵文字の解読に取り組んでいた。そして今年になって、同じ地域の最果ての山岳中に、太古の「岩絵」が存在することを知り、同地に潜入して調査を行うとともに、多数の貴重な写真を撮って持ち帰った。その一葉一葉を見ていて私は、太古の人間たちの生き生きとした息吹に触れる思いがしたのである。

 

雲南は原始岩絵の宝庫
雲南省博物館館長 李 昆声(リ クンスン)

 雲南省は、中国の辺境に位置し、構成民族の多彩さでよく知られている。また省の95%以上は山地で、それゆえに複雑な気候と、奇抜な自然景観を有している。
 その雲南で、近年、太古の岩絵が続々と発見されている。雲南を「原始岩絵の宝庫」と称しても過言ではないだろう。大袈裟かもしれないが、岩絵は原始社会を解釈するための百科全書である。

 

太古人類の精神世界の百科全書
雲南省社会科学院院長 何 耀華(ホォ イャオファ)

 雲南岩絵は、作画の技巧が格別で世界でも珍しい。人物にしても動物にしても、真に迫るものばかりで、これは当時の人々が高い絵画技巧と豊富な想像力を持っていたことを示すものである。
 岩絵は、古代人の生活と精神世界の百科全書であり、研究価値はきわめて高い。世界各国の研究者に、その迷宮への探索、謎の解明に貢献いてほしい。また、日本と雲南とでは、文化の共通点が多い。この本が日本文化のルーツ解明の手掛かりになることを期待している。

 

出版社

祥伝社

定 価

1800円(本体1748円)

刊行日

1995年11月10日

 

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