中国雲南岩面画の特徴
調査報告3

蒼山岩面画

 麗江から高速道路で3時問ほどのところに大理がある。大理石の産地である。大理にはシンボル的な山「蒼山」(海抜2020メートル)がある。大理市内から30キロ離れている。

 蒼山の西側に岩面画が発見されている。顔料は動物の血か脂肪と赤鉄鉱を調合したもので、金沙江岩面画と同じである。違うのはここには人物絵が見られることである。人物、動物のほかに、部屋、村落、手印などの絵もある。

 大理白族白治州博物館の元館長・張楠先生によれば、ここの岩面画の面積は20平方メートルもある。一部はすでにあまりはっきり見えなくなっている。しかし、当時の原型をとどめている絵は200図ほどあり、そのなかの130図以上は人物絵だ。一番大きな絵の高さは1.2メートルにものぼる。一番小さいのは、わずか10センチほどであるという。氏はここの絵は指で描いたのではないかという。手法は影絵の切り抜き式なので、透視空間の観念に欠けている。人物は正面像だが、動物は側面像という特徴をもっている。これは滄源岩面画とも共通しているが、描き方は滄源よりさらに荒っぽい。人物像にも装飾などが見られないし、また刀、矛、矢などの金属の武器も絵に登場していないので滄源よりもさらに古いのではないかという。

 
図 6
 

図 7

 図6の絵については次のように読みとっておられる。

 一番上には長い鼻の象が描かれていて、象の周辺は点々で囲まれている。この点々は落とし穴か囲いかもしれない。

 その下に中国南方民族の代表的な「干欄式」の建物が描かれている。軒が短く、屋根が大きく、茅で葺かれている。この絵は当時、すでに村落が半穴居から「楼居」へ発展し、「村落」が形成され、定住生活を営んでいることを物語っている。

 その建物の下には馬らしき動物が描かれている。さらに下側には人間が6列に並んでいる正面図、手をつなぎ、輪になって踊っているようにも見える。

 よく見ると、1列目にはリーダー役と思われる大きな人が特別に大きく描かれており、両手にはそれぞれ人を逆さにしてぶら下げている。男性の性器も大きく強調的に描かれ、力の強さとその人の地位の重要さを示すものだと見受けられる(図7)

 蒼山岩面画には手印が描かれたものもある。実が累々となっている松の木らしき大樹の周辺に9人の人問がその実を採集している。その下には手印が8つあった。色は黄色。岩面画の人物、建物、木を描いた赤色と違うのでよく目立つ。これはこの岩面画を描いた人の記号を示すもので、作者のサインなのか、それとも宗教的な意味が含まれるのか、不明である。

 その絵の左側には水牛と思われる絵もある。しかし、風化のため、牛の体全体ははっきりと見えない。これは祭祀の一場面かもしれないという。

写真提供:彭飛、和力民、和慶元、張楠、楊天佑