中国雲南岩面画の特徴
調査報告4

滄源岩面画と麻栗坡岩面画

 蒼山岩面画は金沙江岩面画の所在地に近く、いずれも雲南の北側にある。

 これに対し、滄源と麻栗坡は雲南の一番南に位置し、麻栗坡は、ベトナムのすぐ隣で、中国の広西自治区にも近い。

 滄源と麻栗坡の一部の岩面画(たとえば手を上げるポーズを取る人間の絵)は広西の花山と極めて似ている。人物像は多い。羽のスカートの人物を描いたものもある(図8)。一番右の人物は、羽を挿している。

 
図 8
 

図 10

 
図 9
 
図 11

 多くの人物像は衣服をつけない裸体が多い。一方、頭の飾り、耳飾りは極めて多い。男女を区別するために、女性は胸部の豊満さを強調し、股の下に「丸」をつける。股の下に長い点をつけると、男性を示す。一部の女性陰部に三角形の形がつけられている。これは15年前、中国遼西地域で発見された5000年前の陶彫女神像にも見られる。この三角形の符号が何を意味するのか、まだ完全には分かっていない。

 また太陽の絵は極めて多い。元雲南省博物館の楊天佑研究員によれば、これは太陽に対する自然崇拝を反映するもので、簡単な生産道具を頼りに生存を維持する先人たちは大自然がもたらす種々の災難を前に、白分たちの無力さを感じていた。彼らにできるのは、これは神の意志だと思い、ひたすらに神様に祈ることだけだったという。

 滄源岩面画に太陽を背に1人の人間が立っているものがある(図9)。また「太陽と鋤」、「太陽の下で走っている野獣の群」、「太陽と農作物」が描かれているものもある。

 狩猟の場面を描くものは滄源と麻栗坡の岩面画に多く見られる。図10は中央に尾のない野牛を引っ張る人を描いている。図11は野牛と、それを引っ張る2人の人問。野牛は前足を突っ張って抵抗することを生き生きと描いている。

 魚を捕る岩面画もある。網の上に三角形の矢印が描かれ、魚がその網に入る。  「樹上居」の岩面画は最も興味深い。「樹上居」とは大樹の上に長方形の小屋が作られていることである。これは高床式建物の前身かもしれない。野獣と虫の害を防ぐのにも有効だし、雨が多く湿気の強い地理環境とも関係しているのだろう。

 楊天佑氏は、滄源と麻栗坡岩面画には直接に農耕活動を反映する痕跡はあまり見られない、登場している牛は捕捉し、飼い慣らす初期の段階ではないかという。また棍棒や矢、及び円形の器物は岩面画に登場しているが、刀や剣は見られなかったともいう。

写真提供:彭飛、和力民、和慶元、張楠、楊天佑